赤城忠治(作曲・演奏・ヴォーカル)vs古波津監督対談#3
古: いつも不思議なんだけど、赤城さんはどんな手法で作曲するんだろ う?ギターを 使うんだよね?
赤: ギターもよく使いますが、実は自分でも仕事が終わると、あれはどのようにして作ったか覚えていないんです。 作曲する上で必ずやる順番というのもありません。
自分を変な作曲家だと思います。ここ最近は”一番聞こえない、一番遠い音”から 録音を始めますね。僕の中に”無音の定義”というものがあって、無音を形作っているのは千の雑音だと思っているんですよ。 僕にとってその場にある、空気の音こそが一番重要なのかもしれない。”聞こえていない音”が。
古: 僕、今の質問何回かした事あるんだけど毎回要領を得ない。また今回も分からないっす。
謎のままなんだね。ところで、オープニングの牧歌的な歌はやられました。いきなり遠くの国へ連 れて行かれる感じ。オリジナルの言葉で歌っているから翻訳は誰にもできないんだけど、赤城さんなら知ってるわけだ。あれはどういう内容の歌詞なんだろう?
水辺に咲く水仙の香りが、私の窓辺まで
春を運んでくるけど
わたしは夢の中でその花が散る日を待っている。
このさみしい夢からはやく私を起こして。
あなたなら言ってくれる?、これは夢だよと。
その見知らぬ国では、いくつの太陽が輝いているの?
それともそこは寒い処?
運命は私を船に乗せて、遠い異国へと運んでゆくけど
わたしはあの川の岸辺に、
心を置き去りにしてしまった。
恋人よ、あなたならできる。その優しい口づけで
わたしをこの大地に縛りつけている魔法の鎖から解き放すことが、
きっと、あなたならできる。
それはあなたにしかできない。
古: うおっ!これはこれでまた感動!まさに「マリオネット」の世界だね。そして赤城さんにしか書けない歌です!こういう仕込みというか裏ストーリーがあってのあの曲なのか。
映像で足りない物を音楽が補う、というよりは映像と音楽でそれぞ れ違うものを語っていたりする、見た目によらず複雑な映画なんだよね。音楽コンテ はきっかけや感情線とかすごく細かくて難しかったでしょう?
赤: 一筋縄ではいかない古波津監督の作品にいつも参加する時は心しています。
僕がいつも驚かされるのは、物語を映像化するときの監督の想像力のレンジの広さです。先も言いましたが各シーンで、どの目線で、どの感情線で音楽を語ってほしいといろいろな注文に応えなくてはなりませんが、つながり完成したものを観ると納得しますね。
古: ありがとやんす。さて、次回は繊細な赤城さん音楽のアプローチについて聞きましょう。
◆映画「マリオネット」の詳細はhttp://www.no-work.com/marionette/
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